網膜硝子体治療

黄斑上膜

黄斑とは

網膜の最も重要な部分で、直径約1.5mmの大きさです。「おへそ」のように凹んだ形をしています。黄色の色素が存在するため、網膜の他の部位と比べて黄色くみえるため黄斑とよばれます。この部分が正常でないと視力1.0以上望めないことがあります。

黄斑上膜とは

網膜の中心部(黄斑)の上にセロファン様の膜が生じる病気です。本来黄斑は“おへそ”のように凹んでいるところですが、このセロファン様の膜によって黄斑がピンと引っ張られ、凹みが無くなったりします。凹みが無くなると物が大きく見えたり、徐々に視力が低下したりすることがあります。また、黄斑にシワができると物が歪んで見えたりもします。 視力が低下したり、歪みがひどくなると、膜を剥がす硝子体手術が必要になります。点眼薬や内服薬では治らない病気です

  • 黄斑の断面図(OCT)
  • 黄斑上膜の眼底写真

黄斑上膜の治療

硝子体手術

現時点で黄斑上膜に対する治療法は硝子体手術のみです。多くの場合、硝子体手術により歪みは軽くなり、視力は改善または維持しますが、若干歪みが残ったり、視力が下がることがあります。視力維持を目標とする手術ですが、術後数か月かけて徐々に視力が改善する場合もあります。

詳しくは硝子体手術

網膜静脈閉塞症

網膜静脈閉塞症とは

網膜静脈閉塞症とは、網膜の血管(静脈)が詰まる病気です。糖尿病網膜症と並び、眼底出血を起こす代表的な原因に挙げられ、50歳以上のご高齢の方に起きやすい病気です。高血圧と深い関連があり、静脈閉塞を起こした患者さんの80%は高血圧のある方といわれています。高血圧の他に、血管自体の炎症や高脂血症などの方にも発症します。網膜静脈の一部が詰まる「網膜静脈分枝閉塞症」と中心部が詰まる「網膜中心静脈閉塞症」の2つに分けられ、病状や治療方針が異なります。病期を判定するために光干渉断層血管撮影検査を行います。(この検査について詳しくはこちらもご覧ください)従来行っていた、造影剤を腕の静脈に注入して撮影する蛍光眼底造影検査をせずとも病期の判定が可能となることがあります。この病気の自然経過は、2段階以上視力が回復する割合が「網膜中心静脈閉塞症」で約20%、「網膜静脈分枝閉塞症」で約40%という報告があります。

網膜静脈分枝閉塞症

網膜静脈分枝閉塞症は、血管が詰まった部分より末梢側の血管から、行き場を失った血液があふれ出して、眼底出血や網膜浮腫を起こします。出血している部分は、視野が遮られます。眼底出血自体は、徐々に引いていきますが、どの程度視力が回復するかは、黄斑(網膜の中心部)の障害の程度によって異なります。黄斑浮腫が高度であれば、視力は回復しづらくなり、重度の視力障害が残ってしまうことがあります。

  • 網膜静脈分枝閉塞症の眼底写真
  • 網膜静脈分枝閉塞症の光干渉断層血管撮影検査
網膜中心静脈閉塞症

網膜の中心部の静脈が詰まるため、影響は網膜全体に及びます。眼底一面に出血や浮腫が広がりますので、中心部(黄斑)にも出血や浮腫が生じ視力が低下します。出血は、「網膜静脈分枝閉塞症」と同様、徐々に引いていきますが、血流が再開せずに、網膜の機能が奪われたままになると、視力が回復しないことも少なくありません。血管新生緑内障といわれる“たちの悪い”緑内障を合併する場合があります。

網膜静脈閉塞症の治療

まずは網膜循環改善薬(カルナクリン)という内服薬を開始し、同時に血圧測定や血液検査などにより病気の原因を探します。明らかな原因が見つからない場合は、内科などの他科を受診して頂くこともあります。また、網膜静脈閉塞症に伴う視力低下の原因として、黄斑浮腫、黄斑虚血、新生血管に続発する硝子体出血や血管新生緑内障などが挙げられます。なかでも治療対象となるのが、黄斑浮腫と血管新生です。 黄斑浮腫に対する治療法は、主にレーザー光凝固、薬物注射療法、硝子体手術の3つです。それぞれに長所・短所がありますので、病状や患者さんの希望に応じて治療法を決定しております。

レーザー光凝固術

瞳孔からレーザー光を当て、網膜を凝固することで、網膜の中に溜まっていた血液成分が吸収され、浮腫が改善することがあります。治療法としての歴史が長く、技術的に確立されていますが、網膜へのダメージもあるため、しばらく経過をみてから治療します。

手術スケジュール
  • レーザー光凝固は日帰りで可能です。
  • 片眼10分くらいで治療は終わります。眼帯の必要はありません。
  • レーザー光凝固後は基本的には平常の生活で構いません。治療後は2週間~1カ月後に治療の効果判定を行います。

万が一、異常を感じた場合は決められた受診日以外でも早めに受診してください。

手術費用
  • 1割:片眼12,000~19,000円程度
  • 2割:片眼23,000~27,000円程度
  • 3割:片眼34,000~55,000円程度
高額療養費について

ひと月の医療費が一定の額を超えた場合、高額療養制度のご利用により、超過分が戻ってきます。詳細については下記へお問い合わせの上、適宜お手続きください。

  • 国民健康保険の方
    各市町村の国民健康課
  • 政府管掌健康保険の方
    全国健康保険協会
生命保険について

生命保険にご加入の方で、契約内容によっては給付金を受け取れる場合があります。まずはご自身のご加入している生命保険会社にご確認ください。

※診断書を作成する際は、一通につき5,500円(税込)がかかります。

硝子体手術

網膜静脈閉塞症の硝子体中には黄斑浮腫を悪くさせる因子が入っています。その因子を硝子体ごと取り除き、きれいな人工硝子体液に置き換えることで眼のなかの環境が改善されます。また、同時に眼の中にステロイド薬を注入することもできます。他の治療法と比べると黄斑浮腫の再発が少ない傾向があります。

詳しくは硝子体手術

薬物注射療法

トリアムシノロン(ステロイド)や抗VEGF抗体という薬を眼球もしくは眼球周囲に注射する治療法です。黄斑浮腫を抑える効果は高いのですが、再発する傾向があります。

薬物注射の投与方法
♦ 硝子体内注射
眼の中に薬物を直接注入する方法です。
硝子体内注射 スケジュール
  • 注射は日帰りでおこなっております。
  • 注射3日前の朝から注射後3日間、抗菌剤を点眼して頂きます。1回につき1~2滴を点眼してください。
  • 注射自体は片眼数秒で終わります。注射後の眼帯は必要ありません。

注射翌日、2週間後、その後は適宜診察となります。

硝子体内注射 費用
  • 1割:1回 17,000~19,000円程度
  • 2割:1回 34,000~38,000円程度
  • 3割:1回 51,000~27,000円程度
♦ テノン嚢下注射
眼の周りに薬物を注入する方法です。
テノン嚢下注射 スケジュール
  • 注射は日帰りでおこなっております。
  • 注射当日の夜から注射後3日間、抗菌剤を点眼して頂きます。1回につき1~2滴を点眼してください。
  • 注射自体は片眼数秒で終わります。注射後の眼帯は必要ありません。

注射翌日、2週間後、その後は適宜診察となります。

テノン嚢下注射 費用
  • 1割:1回 1,100円程度
  • 2割:1回 2,200円程度
  • 3割:1回 3,300円程度

黄斑円孔

黄斑円孔とは

  • 黄斑の断面図(OCT)
  • 黄斑円孔の眼底写真

網膜の中心部分(黄斑)に穴(円孔)が生じる病気です。網膜の真ん中に穴(円孔)が開きますので、見たい部分が見えなかったり、新聞などの文字が抜けて見えたり、歪みを感じたりします。中高年の女性に多い傾向があります。原因について詳しいことはよくわかっていませんが、網膜における後部硝子体の牽引が重要な役割を果たしていることは間違いなさそうです。以前は、不治の病とされていましたが、適切な時期に硝子体手術を行えば視力の回復が可能です。お薬やレーザーでは治らない病気です。

黄斑円孔の治療

硝子体手術

現時点で黄斑円孔に対する最も有効な治療法は硝子体手術です。黄斑円孔になってかなりの時間が経ってしまった場合以外は、手術によって視力の改善が期待できます。また、円孔が消失すれば、歪みなどの自覚症状はほぼ改善します。手術時間は局所麻酔で約30分です。

詳しくは硝子体手術

写真:手術中の黄斑円孔の眼底写真
矢頭で示した内側が、黄斑円孔です。

黄斑浮腫

黄斑浮腫とは

網膜の最も重要な部分である黄斑に水分(血漿成分)が貯留し、「視力が下がる」、「物が歪んで見える」などの見え方になる病気です。正常の黄斑は、「おへそ」のように凹んでいますが、網膜の血管障害やぶどう膜炎などが原因で黄斑浮腫が生じると、黄斑の凹みは消失し凸の形になります。

網膜硝子体治療についてのよくある質問

網膜静脈閉塞症

しばらく様子をみたら自然に見えるようになりますか。

この病気は、自然に回復するケースがあります。そのため、発症後から3か月程度は内服薬で経過をみます。しかし、出血した場所や量などにより経過が悪くなっていくこともあるため、ステロイド薬などを早めに注射する場合もあります。黄斑浮腫が再発したり、程度が強く視力が落ちていく場合は硝子体手術を検討します。

手術を受ければ見えるようになりますか。

白内障手術後のように手術した翌日からよく見えるわけではありません。硝子体手術後に黄斑のむくみ(浮腫)が軽くなり、視力は術後数か月で徐々に改善していきます。しかし、術後の視力には、術前の病状が大きく影響し、個人差があります。術後の見え方は、黄斑浮腫の程度、出血の量や血管が詰まっている場所によって異なります。視力の回復には数か月かかる場合もありますし、術前から黄斑が傷んでいる場合は視力が改善しないこともあります。

放置するとどうなりますか。

放置すると新生血管が発生し、病気が進行することがあります。病状が落ち着くまでは、定期受診が必要です。

自然に治ることはありますか?

この病気はタイプによっては自然に治っていくこともあれば、出血した場所や量などによって経過はどんどん悪くなっていくものもあります。ものを見る中心(黄斑部)に水がたまり視力が落ちていく場合は、ステロイドのテノン嚢下注射などを行い一時的に水を引かせます。また、何度も再発して視力が落ちていく場合は硝子体手術を検討することもあります。

ステロイドの注射と手術はどちらがいいのですか?

注射は一時的に効いても、2、3ヶ月で再発してくることがあります。2、3回注射しても再発する場合は硝子体手術を検討する場合があります。

レーザー治療が必要になるのはどのような場合ですか?

ものを見る中心(黄斑部)に水がたまった場合、基本的には上記のようにステロイドのテノン嚢下注射や硝子体手術を検討します。しかし、時間が経ったもので黄斑部付近の血管から水が漏れている場合や、造影検査で悪い血管が出てくるような場合はレーザー治療を行います。

中心の血管が詰まったタイプで治りにくいと言われました。

網膜中心静脈閉塞症は治りにくい病気です。根本の血管が詰まって出血した場合、抗VEGF抗体の硝子体内注射が効くことがあります。しかし、再発してくるものなどはレーザー治療や硝子体手術を行っても良くならないことが多いです。この病気は手の施しようがない場合も多いです。

むくみはなくなったといわれましたが、視力が出ません。

黄斑部浮腫を治療して浮腫はなくなっても視力が出にくかったりゆがみが残ったりすることはあります。血管が詰まったときにどのくらいダメージを受けたかやどのくらい時間が経ったかで治療後の視力は変わってきます。

黄斑上膜

ものを見る中心(黄斑部)に膜が張っていると言われましたが手術が必要ですか?

黄斑部に膜が張っていても手術が必要と言うことではありません。まだ見えていて、歪みも強くない場合は経過観察です。視力が落ちてきたり、歪みが強くなったりする場合は手術を検討します。

放置すると失明しますか。

徐々に視力が低下する可能性はありますが、失明してしまう病気ではありません。しかし、視力がかなり低下してしまってからの手術では、視力が回復しないことがあります。

手術時間はどれくらいかかりますか。

病状によっても違いますが、局所麻酔で30分程度です。

再発しますか。

手術で、黄斑上膜だけでなく網膜の最も内側の膜(内境界膜)まで剥がすことによって再発はほとんどありません。

黄斑上膜といわれ手術しても歪みが残ると言われましたが。

黄斑上膜の手術を受けた多くの方は、歪みは軽くなります。しかし一方で、膜を剥いでもむくみ(黄斑浮腫)や歪みが残ることもあります。悪くなるのを防止する、少し改善させるという手術と考えています。

どのくらいすると見えるようになってきますか?

膜を剥いでもすぐには見えるようにはなりません。2,3ヶ月して落ち着いていきます。数ヶ月で徐々に視力が改善していく感じです。

硝子体手術は術後にうつぶせになる必要があると聞きましたが。

黄斑上膜の手術で術後はうつぶせが必要なことはほとんどありません。

手術は痛いですか?

局所麻酔で30分ほどの手術です。手術の痛みはありません。

黄斑円孔

手術はいつしたらいいですか。

初期の黄斑円孔は自然に治ることもあるため、しばらく経過をみます。しかし、ある程度進行した黄斑円孔は、自然には治りませんので硝子体手術が必要です。黄斑円孔に対する硝子体手術は、一般的に術前視力が良いほど、年齢が若いほど、そして穴(円孔)が小さいほど、視力の回復がいいとされています。

歪みなどの症状は治りますか。

多くの方は、術前よりも術後のほうが視力は良くなります。また、歪みや見えない中心部分はかなり回復しますが、若干症状が残る場合もあります。術後1年で視力1.0以上になる確率は、約40%という報告もあります。

手術の危険性はありますか。

他の病気と比べると、手術中に網膜裂孔が生じやすいとされていますが、術後に網膜剥離になることは稀です。

術後にどれくらいの期間のうつ伏せが必要ですか。

黄斑円孔の手術は、眼のなかに空気または特殊ガスを充満させて終わります。円孔のなかに水が溜まらないようにするため、空気が黄斑にあたるよう、術後はうつ伏で過ごさなくてはなりません。以前は、1週間うつ伏せを継続していましたが、最近はうつ伏せなし、あるいは1日のうつ伏せでも治ることがわかってきました。望月眼科では、術前の円孔の大きさなどを参考にし、できるだけ患者さんの負担を軽減できるように、過去のデータを元にひとり一人のうつ伏せ時間を決めております。

黄斑円孔といわれましたが手術しないといけませんか?

黄斑部に穴が空いてしまった場合、まれに自然に治ることもありますが、早めに手術をした方がよいでしょう。時間が経ってしまうと黄斑部網膜が傷んで手術をしても治りにくくなりますし、視力も回復しにくくなります。

穴がふさがらないことはありますか?

近視がとても強いタイプや穴が空いてかなり時間が経っているものは穴が閉じにくいことがありますが、通常のものであれば穴はふさがることがほとんどです。

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