【白内障手術 症例3】50代/多焦点レンズ:クラレオン パンオプティクス

患者様は、10年前に当院で両眼-4.5Dの近視に対するiDesign iLASIKを受けられました。その後問題なく過ごされておりましたが、約2年前に、徐々に視力が低下してきたということで再来されました。

両眼の屈折度数が-1.0Dと軽度近視化していましたが、裸眼遠見視力は0.9と日常生活に支障を来すほど低下しておらず、また裸眼近見視力も1.0と良好でした。角膜形状解析検査では角膜拡張症の兆候はなく、その他の検査でも異常は認めず、両眼核白内障による近視化と考え、ご本人と相談し一旦経過をみることとしました。

それから1年後、見え方がさらに悪くなり、不便になったということで再来。視力は裸眼(右0.5、左0.9)、矯正(右0.7、左1.0)で、右眼の視力がさらに低下していました。屈折度数は右-1.75D、左-1.00Dで、左眼は変化していませんでしたが、右眼が1年前より0.75D近視化し、白内障の進行を認めたため、右眼のみ白内障手術予定となりました。

患者さんは、裸眼で生活したい、老眼鏡をなるべく使いたくないという理由で多焦点レンズを希望されたため、日常生活での物の見え方の優先度を尋ね、ご本人と相談した結果、今回はクラレオン パンオプティクスを選択しました。

右眼の裸眼視力

術前術後
遠見0.51.2
近見0.71.0

患者様の術後感想

近くも遠くも良く見える。思っていた以上に近くが見えるので嬉しい。スマホも老眼鏡なしで使用できる

スリットランプ検査-右目(術後)
コントラスト感度検査-術前
コントラスト感度検査-術後

総評

レーシック後の白内障手術では、術後の度数ずれが生じやすいため、当院では、Camellin-Calossi、OKULIX、Barrett True-Kなどの複数の計算式を用いて度数を算出し、術後の度数ずれを最小限に抑えるよう努めています。また、こちらの患者様は、当院でレーシックを受けておられましたので、レーシック前のデータも活用することで、より度数ずれのリスクを低減できたと考えています。

クラレオン パンオプティクスは、2019年に国内承認された3焦点眼内レンズ パンオプティクスの長所を踏まえつつ、さらに新素材を採用して長期的透明性を追求した新型レンズです。クラレオン パンオプティクスの近方焦点距離は40~60cmに設計されているため、術後にやや近方が弱いと感じることを心配していましたが、右眼単独で近くも遠くも良く見えるとおっしゃっていただいたので安心しました。また、術後の自覚屈折度数は-0.25Dで、術前に心配していた度数ずれもほぼなく、狙い通りの結果となりました。

術後1カ月の定期検査で、白内障手術をしていない左眼が見えにくいとして、手術希望の申し出がありました。手術前は見えていた方の眼が、見えていなかった方の眼の手術後に見えにくいと感じることはしばしば経験されます。

ご希望により右眼同様左眼も同じクラレオン パンオプティクスを使用した白内障手術を行い、無事終了しました。術後患者様からは両眼を多焦点レンズにしたことで、片眼のときよりも見え方が良くなっとおっしゃっていただきました。