ドライアイ

ドライアイの症状

ドライアイとは、涙の量や質が変化して、角膜や結膜に障害が出てしまう病気のことです。次の12の症状のうち5つ以上当てはまればドライアイの可能性があります。

ドライアイチェック

ドライアイになると、眼が乾くといった症状以外にもさまざまな不快な症状があらわれます。 また、10秒間目を開いた状態を保つことができない場合も、ドライアイの可能性が高いといわれています。症状が重くならないうちに治療することが大切です

ドライアイの原因

涙の構造

さまざまな理由により涙を正常に眼にとどめられなくなったドライアイの眼では、ドライスポットという涙膜の薄くなった部分ができてしまいます。
この部分は涙で守られていないため、異物や細菌、ウイルスなどの影響を受けて、角膜の表面が傷つきやすくなります。

  • 健康な方

    健康な人は角膜が涙の膜に覆われています。

  • ドライアイの方

    ドライアイになると、ドライスポットという涙膜の薄くなった部分ができてしまいます。

  • ドライアイの方

    ドライスポットは、十分に涙膜で守られないため、角膜に傷がつきやすくなります。

ドライアイの種類

涙の「量的異常」と「質的異常」

ドライアイは単に眼が乾くという病気ではありません。ドライアイでは、涙の状態が異常になってしまうために、「眼が乾く」、「眼がゴロゴロする」、「眼が痛い」などの症状が生じてしまうのです。

この涙の異常は大きく2つに分けられます。1つは涙そのものが減ってしまう「量的な異常」、そしてもう1つは、涙の性質が変化し、悪くなってしまう「質的な異常」です。

涙の量の異常(涙液減少型ドライアイ)

眼は刺激を受けたり乾いたりすると、反射的に涙を流して涙の膜を安定させようとします。つまり、正常な状態だと一時的に眼が乾いても、すぐに眼が潤うしくみができているのです。しかし、涙液減少型ドライアイでは、『眼の刺激→神経伝達→涙の分泌』というシステムに異常があり、眼が乾いても涙が分泌されにくくなります。

涙の質の異常(蒸発亢進型ドライアイ)

涙は3層構造になっていて眼を守っています。
角膜に接しているのはムチン層で、涙を眼の表面にとどめる働きがあります。ムチン層を覆っているのが水層で、涙の大部分が水層からできています。一番外側にあるのが油層で、涙が蒸発するのを防いでいます。 蒸発亢進型ドライアイでは、涙膜の油層を作っているマイボームという組織に異常があり、油層が十分に分泌されず涙が蒸発しやすくなります。

BUT短縮型ドライアイ

ドライアイはその言葉から、“眼が乾く”というイメージがあるかもしれませんが、涙が十分出ている人でもドライアイである可能性があることがわかってきました。それが、眼が乾いていないタイプのドライアイ:「BUT短縮型ドライアイ」です。

パソコンなどの作業をすることが多いオフィスワーカーや、コンタクトレンズをつけている比較的年齢の若い方の間では、男女問わずこの「BUT短縮型ドライアイ」の患者さんが増えています。

従来のドライアイの患者さんは、高齢の女性に比較的多いという特徴がありましたが、このように、「BUT短縮型ドライアイ」の患者さんの特徴は、従来のドライアイの患者さんとは全く異なっているのです。

涙の質を調べるBUT検査

涙がたくさん出ても、質が良くないために目の表面がすぐ乾くこともあります。涙の質を調べる検査で、目を開いてから目の表面の涙の膜が破壊されるまでの時間(BreakUpTime)を測ります。BUTが5秒以下の場合、ドライアイが疑われます。

涙の量を調べるシルマー検査

涙の量を調べる検査で、目盛りのついた専用の試験紙を下まぶたの端に5分間挿入します。試験紙が涙で濡れた長さで、涙の量を測ります。 涙の量が5mm以下の場合、ドライアイが疑われます。 試験紙の挿入による刺激で分泌される涙の影響を避けるために、点眼麻酔を使用する「シルマーテスト変法」を行うこともあります。

<涙の安定性に重要な役割を果たしているムチン>

涙目の表面を覆っている涙は、油層、水層、ムチン層の3層構造を成していますが、この涙の中に含まれる物質であるムチンが、涙の安定性、つまり涙の「質的な異常」と関わっていることが最近の研究からわかってきました。

下図のように、正常な状態では涙はきれいな3層構造を成していますが、涙の中のムチンの性質が変化してしまうと、涙が不安定になってしまい、眼の表面を覆う涙の膜が壊れやすくなってしまうのです。つまり、「BUT短縮型ドライアイ」は、涙に含まれるムチンの状態が異常になって起こるということが原因の1つとして考えられています。

ドライアイの治療法と対策

従来、ドライアイに対する薬物治療では、涙に近い成分をもつ人工涙液と角結膜上皮障害治療薬の2種類でした。角膜上皮障害治療薬(ヒアルロン酸ナトリウム)には粘性があり、水分を保つ効果があります。また、涙や点眼液を目の表面に長く保持できることから、角膜の傷の修復にもつながります。

しかし、ムチン(たんぱく質)が欠乏しているBUT短縮型ドライアイには、従来の治療薬では、なかなか症状が改善しませんでした。

新しい作用機序をもつドライアイ治療点眼剤(ジクアホソルナトリウム)が発売されました。涙液成分であるムチンと涙液の分泌を促進し、質・量の両側面から涙液の状態を改善することにより、ドライアイ症状を改善することが期待されています。

ドライアイのタイプとして、涙を角膜の表面にとどめるムチンという成分の働きが悪いため、角膜表面に微細な荒れが生じ、涙がうまく広がらない「BUT短縮型ドライアイ」が注目されています。従来のドライアイタイプに加え、BUT短縮型ドライアイにも治療効果が期待されています。

治療法

点眼薬による治療薬
働き 人工涙液 角膜上皮障害治療液
(ヒアルロン酸ナトリウム点眼液)
ドライアイ治療液
(ムチン/水分分泌促進点眼液)
水分を補充
水分を保つ ×
傷を治す ×
ムチンを産生 × ×

また、点眼薬のほかに乾燥予防や風が直接目に当たらないようにするために、ゴーグルタイプのドライアイ用メガネも効果的です。重症の場合は、涙の排出口の部分に栓をして涙の流出を塞ぎ、涙が目の表面にとどまるような治療を行うこともあります。

キープティア

ゼリー状の物質を涙が出ていく涙管に注入します。体温まで温まると涙管で固まってしまうので涙の出口を塞いでくれます。痛みはなく2,3分で終了します。
ただ2,3か月すると流れ出てしまうのでその時の状態を見て再注入することもありますし、症状が改善していれば点眼治療で様子を見ます。

涙点プラグ

また重症なドライアイの方はシリコン性の涙点プラグを使用します。これも痛みはなく2,3分で終了しますが経過中に自然に取れてしまったり(脱落)、まれに涙管の中に入ってしまったり(迷入)することがあります。
涙点プラグも改良されてきており、最近のものは脱落したり迷入したりすることは少なくなってきています。涙点プラグが入っていているときに痛みを感じたり違和感を感じたりすることはほとんどありません。 またどうしても気になるときは涙点プラグを除去することも可能です。

普段から気をつけること

周囲の環境によって、涙が蒸発しやすくなり、眼が乾きやすくなることがあります。特に、パソコン、エアコン、コンタクトレンズの使用状況を改善することは、ドライアイの症状を和らげるのに効果的です。

ドライアイについてのよくある質問

一度にに何滴も点眼した方が、ドライアイに効くのですか?

瞼の中にためておける涙の量は30μlと言われています。一方目薬1滴は50μlです。点眼1滴だけで、瞼の中は限界を超えて、あふれてきますので、点眼は1回に1滴入れば十分です。

涙が出るのにドライアイと診断されました。どうしてですか。

ドライアイは、涙の分泌量が少ないタイプと涙の質が低下するタイプがあります。涙の質が低下するタイプは、涙の量が足りているにもかかわらず、涙の成分のバランスが悪く、すぐに蒸発し眼の表面が乾燥します。このタイプのドライアイも点眼薬で治療します。

ドライアイを放っておくとどうなりますか。

一般的にドライアイは、失明するような重症な病気ではありません。しかし、眩しい、見えにくい、ショボショボするといった症状で生活の質を低下させることがあります。また、ドライアイによる慢性的な角膜のキズは、感染症や濁りの原因になることがあります。

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